Leaders Style(リーダーズスタイル)

株式会社サイバーエージェント 曽山哲人

サイバーエージェント 取締役 人事本部長

曽山哲人

Tetsuhito Soyama

1974年生まれ。上智大学文学部卒業。伊勢丹を経て、1999年にサイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部営業統括を経て、2005年に人事本部人事本部長に就任。2008年より現職。著書に『最強のNo.2』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など
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 採用、育成、活性化、それと適材適所。大きくこの4つがサイバーエージェントの人事が重要視していることです。最初の3つ、採用、育成、活性化は藤田(サイバーエージェント社長)がかつて「サイバーエージェントの人事はこの3つを大事にする」と宣言をしたことから始まります。まず、優秀な人材を採用することに全力を尽くす。そして、採用した人材を成長させるため、育成の環境や仕掛けを作る。また、人材がモチベーションを維持し、力を発揮できるように活性化を行う。それが人事の考え方です。2009年から2010年くらいにかけて新卒も中途もエンジニアを中心に採用を強化したことにより、社員数が大幅に増加しました。そうすると、適材適所の問題が起きてきました。人数を増やすことが悪いのではなく、増やした後にちゃんと人材が活かせるように適材適所できているかどうか、会社が環境を作れているかが問題なんです。
芸術的な適材適所をする
曽山哲人
 それで、2011年に加わったのが適材適所というキーワードです。
 適材適所を図るうえでポイントになるのは、定量情報と定性情報の両方を見ること。サイバーエージェントでは「GEPPO」(月次報告、略して月報の意味)というタレントマネジメントデータベースを作り、ここに人材の定量情報を集約させています。月に一回、一人3つの項目について必ず全社員に回答してもらうのですが、3つの項目は簡単なので、入力はものの数分で終わるようなものです。毎月質問する2つは「先月の目標は何でしたか?」ということと「目標を達成しましたか?」ということ。この評価を晴れ、曇り、雨の天気の記号を使って記してもらう。3つ目は毎月変わっていて、ある月では「あなたの興味や得意なことを教えてください」と質問しました。そうすると「エレクトーンを15年やっています」という答えがあったり、通常業務では見えてこない得意分野が見えてくるんです。こういったデータについて、例えばエレクトーンだったら“音楽”というフラグを裏側で付けておく。そうすると、何か新規事業をする際に、「音楽に興味がある人」と検索すると定量的な情報として出てくるのです。定性情報というのは、感性だったり考えていることだったり、いわゆるデータベースからでは見えないものを面談して把握しています。データベースに入力された情報と、面談でヒアリングした内容を統合し、いわゆる社内ヘッドハンティングチームである社員の情報を管理するキャリアエージェントグループが、社内の人材ニーズとそれにあった社員をマッチングしています。サイバーエージェントには「芸術的な適材適所をする」という概念があって、会社の戦略に沿った形で、特に成長が期待できる分野に適した人材を配置することが、成果を上げる大きな要因なんです。ですからこの芸術的な適材適所の配置をどれだけやれるかがキャリアエージェントグループのミッションなんですよね。

 新卒で入社した伊勢丹に勤めたのは1年間だけ。新宿の本店で紳士服の販売をしていました。一年目なりにできることを沢山提案し、それが先輩に喜ばれたこともありました。私がいた売り場は、スーパーメンズといわれる身長が190センチかウェストが100センチ以上という大きなサイズを扱っている売り場。大きいサイズのハイブランドは伊勢丹でしか売っていないので、リピーターが非常に多く、よく先輩がロイヤルカスタマーに手紙を書いていたのですが、その手紙の紙質が伊勢丹のロゴが入っているだけのすごくペラッとしたものだった。ここに風景など季節に合わせた画像を印刷したらどうかと思い、家に帰って自分のプリンターで出力をして持って行ったら凄く喜ばれたんです。お客さんにも好評だったし、先輩社員から増刷依頼がきたほど。それは新人時代の僕にとっての成功体験ですね。
 入社したのはeコマースを伊勢丹が始める年でもありました。ネットにも興味があったので、志願してマルチメディア室に兼務させてもらいました。スーパーメンズはここでしか取り扱っていないので、日本中から自分に合うサイズの服が無いという方々が注文してくださり、これが面白いように売れたんです。ただ、一つ壁を感じてしまったのです。伊勢丹は提案を受け入れてくれる風土もあったし、先輩も優秀な方々がたくさんいましたが、自分が将来どうなるんだろうということが、あまりにも見え過ぎたんです。いくつになったら係長、そのあと課長、部長・・・というモデルが見えすぎてしまった。焦りました。もっと実力主義の環境の中で働きたいという欲求が沸々と沸き上がってきたんです。eコマースの成功もあり、ネットの分野は面白いのでは、と思いサイバーエージェントに入社しました。
「流行らなくては意味が無い」
株式会社サイバーエージェント
 リーダーというのは、リードする人でなければいけないけれど、リードに「er」が付くということが忘れられがち。何かというと、どこにリードするかを決めないと駄目なんです。僕も人事を任されて何年後かに気づきました。ゴールやビジョン、目標、言葉はどれでもいい。どこに向かっていくのかを提示し、組織のビジョンと個人の業務を結びつけるのがリーダーの第一歩目だと思います。これをせずに、面談をしたり、コミュニケーションを重ねたり、育成するとか環境を作るというのは、全部手段の罠にはまっている状態で、思いついた手段をやっているだけ。「21世紀を代表する会社を創る」というサイバーエージェントのビジョンがあって、それに共感して入社をしても日々の業務ではなかなかそこまでイメージができない。大きなビジョンの下で、人事本部だったらこの部署が何を目指しているのか提示する必要があるんです。人事本部の場合は「世界最高の事業人材育成企業」というビジョンがある。いつかFortuneやBusinessWeekのような世界的な雑誌に「サイバーエージェント イズ ホット!」という特集が組まれて、しかもその仕掛けはヒューマンリソースの仕組みにある、日本風だけれど世界でも真似できるから真似すべき、という記事が書かれるくらいになりたい。皆で共有できる目標ですね。

 共通言語があれば、その共通言語をもとに何をすればよいのか、皆は頭を使うようになる。その言葉が組織を作り、言葉が人を動かす。そういう言葉を生み出すためには「流行らなくては意味が無い」と思っています。駄目なリーダーは自己満足に陥って「なんで響かないんだ」なってしまいがち。流行るかどうかは、結局は自分軸じゃないんです。これをやりたいって思わせる、メンバーを自然体で導く言葉。流行るかどうかは色々言葉を出してみて、反応を見ます。その量は半端無いですよ。
※記事の内容は取材当時のものとなります